腰痛の疫学
・腰痛の罹患率
有訴率:40~50%
既往歴:70~80%
・85%は原因不明の非特異的腰痛(3週間以内に自然軽快)
・原因疾患の97%は整形疾患、2%が腹部内蔵疾患、1%が脊椎がんや炎症性関節炎、感染症
分類
1)原因による分類
脊椎由来
神経由来
内臓由来
血管由来
心因性
非特異的腰痛(原因不明)
期間による分類
急性:4週間未満
亜急性:4週以上3か月未満
慢性:3か月以上
2)期間による分類
急性:4週間未満
亜急性:4週以上3か月未満
慢性:3か月以上
まず除外すべき鑑別疾患
腰痛のred flag sign
突然発症
・急性脊椎硬膜外血種(特に抗血小板薬や抗凝固薬内服中)
・腎梗塞(心房細動既往)、出血
・副腎出血
・AAA破裂
胸痛の合併
・大動脈解離
発熱
・感染症
年齢<20歳
・腰椎すべり症、腰椎分離症、悪性疾患、感染症
年齢>55歳
・悪性疾患(多発性骨髄腫、転移性骨腫瘍、悪性リンパ腫など)、骨折、腹部大動脈瘤
時間や活動性に関係のない腰痛
・悪性疾患、感染症(化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎、硬膜外膿瘍)
がん、ステロイド、HIV感染の既往
・悪性疾患、病的骨折、感染症
・Th5以上の椎体骨折は癌転移を疑う
栄養不良、体重減少
・悪性疾患(多発性骨髄腫、転移性骨腫瘍、悪性リンパ腫、等)
広範囲に及ぶ神経症状、サドル麻痺
・椎間板ヘルニア、馬尾症候群
構築性脊椎変形
・側弯症、後弯症
治療
red flagsがなければ4~6週間の保存治療を行い、改善しなければ精査を行う
・原因不明の非特異的腰痛の急性期では「痛みに応じた活動性維持」
・認知行動療法(亜急性、慢性)
・腰椎コルセット(急性、亜急性)
※ 脊椎圧迫骨折
・骨折椎体はTh10~L2に多い
・一方、痛みの訴えは「L4~5付近」が多いので、疼痛部位に騙されないこと
(骨折部位から握こぶし一個分下、握りこぶし一個分外側が多い)
・臀部痛の場合もある
・必ず打腱器、手拳で叩打して、痛みのある脊椎を確認する。
・検査は「腰椎2方向+腰椎2方向」(または「胸腰椎移行部2方向」)
・受傷時X線で新鮮骨折が判明するのは10%(正常の場合もある)
・確定診断はMRI(MRIが撮れる環境なら、CTよりMRIが優先)
・MRIではT1低、T2高信号(骨髄浮腫の所見)
(参照:総合診療2022年4月号)
注)圧迫骨折と破裂骨折との鑑別に注意
・椎体後壁に破綻が認められる場合は破裂骨折であり、圧迫骨折と比べて圧潰が非常に早く不安定な状態である。
・急速に下肢の麻痺や直腸膀胱障害を来すことがある。
→破裂骨折の場合はコルセット固定が必要。コルセットができるまでは安静臥床が必要
治療
除痛(頓用ではなく定期内服)
・NSAIDs、アセトアミノフェン、トラマドール
・ダーメンコルセット
・カルシトニン注も有効とされる
早期離床を目指す
参考文献
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