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線維筋痛症(fibromyalgia:FM)

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疾患

・原因不明の全身の疼痛を主症状とする疾患。

・身体の広範な部位の慢性疼痛とこわばりを主症状とし、解剖学的に明確な部位に圧痛を認める以外、他覚的ならびに一般臨床検査所見に異常がない。

・脳のグリア細胞の活性化、脳帯状回の炎症等の関連が指摘されている。

・疼痛は腱付着部炎や筋肉、関節などにおよび、体幹や四肢から身体全体に激しい疼痛が広がる。

・患者は男性より女性の方が非常に多く、働き盛りの中高年に発生率が高い。

・治療抵抗性であり、疲労、倦怠感や睡眠障害、認知症状、不眠、不安、抑うつ気分など、多彩な身体および精神・神経症状を伴う

 

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全身痛の鑑別疾患(除外すべき疾患)

・敗血症

・ビタミンD欠乏症

・リウマチ性多発筋痛症

・パルボウイルス感染症

・悪性腫瘍の転移

・関節リウマチ

 

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筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS:myalgic encehalomyelitis/chronic fatigue syndrome)との相違点

・慢性的な全身痛が主症状の場合はFMと診断

・慢性的な疲労を主に訴える場合はME/CFSと診断する

(必ずしも区別は明確ではなく合併している例もある)

 

診断基準

・下記2つの診断基準が広く国際的に用いられている

・より適切に線維筋痛症の診断を行うために、両基準を用いることが多い

(現状では、ACR2010年基準で問診し、1990年基準の圧痛点の確認を行い、診断を確定するのが現実的となる)

米国リウマチ学会分類基準(ACR1990年基準)

全身に18箇所の圧痛点があり、4kgの力で押し11箇所以上痛く、また広範囲の痛みが3ヶ月続いていることが条件

 

参照(このサイトより引用):https://tuneyoshida.hatenablog.com/entry/2019/10/26/FM

 

 

米国リウマチ学会診断基準予備基準(ACR2010年基準)

・圧痛点を利用せず、痛みと身体症状、神経・精神症状の組み合わせで線維筋痛症を診断する基準

・少なくとも3か月以上にわたり全身の数か所に痛みがあり、疲労感や起床時不快感、認知症状(思考、記銘力障害)の症状を伴っており、他の疼痛を示す疾患がない場合診断される。

 

参照(このサイトより引用):https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0117/G0000621/0006

 

WPI:widespread pain index 広範囲疼痛指数

SS:symptom severity 臨床徴候重症度

 

 

治療

「今後改善しない可能性」や、痛み以外の症状に対する治療の必要性を説明し、同意を得て治療を開始する。

・「痛みをなくそうとするのではなく、不快な時間を減らす努力」「病気と付き合う」ように指導する。

・薬物療法のみでの改善は難しく、同時に「運動療法」や「認知行動療法」を進めることが望ましい。

・なかでも「有酸素運動」が有効であるとされている。

 

薬物療法

疼痛に対して

・プレガバリン(リリカ®)

デュロキセチン(SNRI:サインバルタ®)

・トラマドール

 

痛みを伴う不眠に対して

・プレガバリン(リリカ®)

・ガバペンチン

・ミロガバリン(タリージェ®)

睡眠をターゲットに

・クエピアチン(セロクエル®)

・オランザピン

 

抑うつ・不安に対して

・デュロキセチン(SNRI:サインバルタ®)

・ミルザタピン(ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA):リフレックス®)

・アミトリプチリン(三環系抗うつ薬:トリプタノール®)

 

運動療法

ストレッチ運動および有酸素運動

ストレッチは約30秒間保持し5回ほど繰り返すべきである。

有酸素運動(ウォーキング,水泳,エアロバイク)は症状を軽減することがある。

 

局所の加温,ならびにマッサージ

症状がある筋肉を愛護的にストレッチする運動を毎日行うべきである

 

総合的なストレス管理

・運動や睡眠の改善

・ストレス軽減

・認知行動療法

・深呼吸訓練,瞑想

・心理的支援,必要な場合カウンセリング

 

耐えがたい局所の圧痛部の治療に、1~5mLの0.5%ブピバカインまたは1%リドカインの注射がときに使用されるが,定期的な使用がエビデンスで支持されていないため,そのような注射を初期治療として頼るべきではない。

 

 

 

 

 

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