定義
・臥位で改善し、立位や坐位で悪化する呼吸苦に低酸素血症(室内気PO2が4mmHg以上、またはSpO2が5%以上低下)を伴う状態をいう。
・座位で増強する呼吸苦を「扁平呼吸(platypnea)」という
・座位による低酸素血症を「orthodeoxia」 という
・心臓由来の「Cardiac POS」と、心臓以外が原因となる「Non-cardiac POS」に分かれる
・卵円孔開存症、心房中隔欠損症といった心内シャントや、肝肺症候群や肺動静脈奇形、肺切除後、COPDなどの心外シャント、その他(大動脈蛇行など)などが原因となる
機序
・その成立には器質的因子と機能的因子の双方が必須とされる。
・器質的因子とは右左短絡路で卵円孔開存,心房中隔欠損症,開窓を有する心房中隔瘤などが挙げられる。
・一方で機能的因子は右房内圧上昇で、その原因として肺気腫,肺動静脈瘻,肝硬変,大動脈蛇行などがある.
・この機能的・器質的因子両者の存在下、姿勢変換時に心臓の偏位と右房圧排が強調されて一過性に右房内圧が左房内圧より高値となり、右左シャントが生じる。
Cardiac POS
・卵円孔開存症、心房中隔欠損、心房中隔動脈瘤などが原因
・2次的な要因として、心房を圧迫するような大動脈の解剖学的変化(拡張、動脈瘤、歪み)がある。
・マイクロバブル心エコー検査で右房に気泡が出現後、3心拍以内に左房内に気泡が出現した場合には「心内シャント」を示唆する。
・治療は外科的治療。
Non-cardiac POS
・肺動静脈奇形、肝硬変による肺内シャントなどが原因。
・マイクロバブル心エコー検査で右房に気泡が出現後、5心拍以降に左房内に気泡が出現した場合には「肺内シャント」を示唆する。
・肺血流シンチ(右左シャントの証明)
肝肺症候群
・進行性肝疾患(主に肝硬変)、門脈圧亢進症、先天性門脈体循環シャントが基礎病態としてあり、肺血管拡張(肺内シャント)が生じたために異常な低酸素血症を来した病態を肝肺症候群と定義している。
・肝臓病があるために、心臓あるいは肺自体に病気がないにもかかわらず、低酸素血症をきたす状態。
・詳しい病態は不明。肺の毛細血管が拡張による肺内シャントが本態。
・肺の毛細血管拡張の原因として、血管拡張作用のある一酸化窒素が関係していると考えられている。また、一酸化窒素合成酵素の活性が高くなっているということが報告されている。しかし実際の病態にかかわっているのかは不明。
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