労災統計
・労働災害による死亡者数は年々減少傾向にあり、令和6年は746人。
労働災害が発生した場合に事業者が負う責任
労働災害が発生した場合に事業者が負う責任:
労働災害が発生した場合、事業者は、労働安全衛生法違反などに対する「刑事上の責任」、安全配慮義務違反による損害賠償という「民事上の責任」、作業停止命令や免許取り消し等の「行政上の責任」、企業の信用の失墜という「社会的な責任」の4つの責任を負う可能性があります。
① 刑事上の責任
労災が起きた際の事業者の「刑事上の責任」:
・業務上過失致死傷罪
・刑事上の責任としては、労働安全衛生法違反の罪と刑法上の業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。
・労働安全衛生法では、事業者に対して労働災害防止の事前予防のための安全衛生管理措置を定め、これを罰則をもって遵守を義務づけています。労働災害の発生の有無を問わず、これを怠ると刑事責任が課せられます。
・また、業務上労働者の生命、身体、健康に対する危険防止の注意業務を怠って、労働者を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪(刑法第 211 条)に問われることになります。
1)労働安全衛生法違反について
・労働安全衛生法は、事業者に対して安全措置義務を課すとともに、両罰規定を設けています(同法122条)。
注)「両罰規定」:
法人に所属する役員や従業員らが、法人の業務に関連して違法な行為をした場合、個人だけでなく、法人も併せて罰せられる規定。
・そのため、同法違反が認められると、実際に違反をした者が罰金に処される(同法116条、117条、119条、120条)だけでなく、会社も罰金に処されます。
2)業務上過失致死傷罪
・安全配慮義務を怠った役員や社員は業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。
② 民事上の責任
労災が起きた際の事業者の「民事上の責任」:
損害賠償責任:
・被災した労働者は、労災給付を受けることができますが、それはすべての損害について填補するものではありません。そのため、会社は民事上の損害賠償責任を追及される可能性があります。
・会社に民事上の損害賠償責任を問う場合の法的根拠としては、
1)不法行為責任(民法709条の一般の不法行為責任、715条の使用者責任、717条の工作物責任)
2)安全配慮義務の債務不履行(労働契約法5条、民法415条)
3)自動車損害賠償保障法に基づく運行供用者責任(自賠法3条)
があります。
また、役員や社員個人も709条に基づき不法行為責任が追及される可能性があります。
労災保険で補償されるのに、なぜ民事の損害賠償も問題になる理由:
労災保険は定型的な給付で、慰謝料や全額の逸失利益(事故や災害などがなければ将来得られたはずの利益や収入のこと。主に交通事故などで死亡したり、後遺障害が残ったりしたときに、加害者側へ損害賠償として請求できる)は含まれないからです。填補されない損害について、安全配慮義務違反を理由に事業者へ賠償請求がなされます。保険給付と民事責任は別の層という理解です。
安全配慮義務:
・「安全配慮義務」とは、企業や事業主が、従業員の生命や身体、心身の健康を危険から守り、安全に働けるように必要な配慮をする法律上の義務のことです。
・労働契約法第5条などに法的根拠があり、正社員やパート、アルバイト、派遣社員など、雇用形態に関わらずすべての労働者が対象となります。
労働契約法第5条
(労働者の安全への配慮)
「第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
・判例の積み重ねで確立した義務が、平成20年施行の同法で条文になりました。
・安全配慮義務に違反して従業員が負傷したり健康被害や死亡(過労死など)に至った場合、企業は民事上の損害賠償責任(債務不履行や不法行為など)を問われます。また、労働基準監督署による是正勧告や、社会的信用の失墜につながるリスクもあります。
【解説】安衛法ではなく労働契約法である点が引っかけどころ。違反は民事上の損害賠償につながる、と4つの責任に接続できる。
【型】条文→内容→判例由来という経緯。
③ 行政上の責任
労災が起きた際の事業者の「行政上の責任」:
作業停止、許可取り消し等の行政処分
・労働災害が発生した場合、労働基準監督署からの是正勧告や改善指導、機械設備の使用停止や作業停止、免許取り消し等の行政処分等を受ける場合があります。
④ 社会的責任
労災が起きた際の事業者の「社会的な責任」:
企業の社会的評価の損失
・労働災害が報道されることにより、企業の信用の失墜や、社会的評価を下げる可能性があります。
労働災害における業務上過失致死傷罪と安全配慮義務違反の違い
労働災害における業務上過失致死傷罪と安全配慮義務違反の違い:
労働災害における業務上過失致死傷罪は、必要な注意を怠って労働者を死傷させた場合に問われる「刑事上の責任」です。
一方、安全配慮義務違反は、使用者が労働者の生命・身体を守るために必要な安全対策を怠った場合に問われる「民事上の責任」で、損害賠償の対象となります。
同じ事故でも、現場責任者・管理者等の個人の刑事責任と、使用者・会社等の民事責任がそれぞれ問題になる場合があります。
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