酸素欠乏危険作業の種類
第1種酸素欠乏危険作業;酸欠の危険がある場所での作業
第2種酸素欠乏危険作業: 酸欠および硫化水素中毒の危険がある場所での作業
酸素欠乏症等の防止
酸欠則第5条第1項
・事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合は、当該作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18パーセント以上(第二種 酸素欠乏危険作業に係る場所にあっては、空気中の酸素の濃度を18パーセント以上、かつ、硫化水素の濃度を100万分の10以下)に保つように換気しなければならない。
・ただし、爆発、酸化等を防止するため換気することができない場合又は作業の性質上換気することが著しく困難な場合は、この限りでない。
第1種酸素欠乏危険作業
・第一鉄塩類を含有している地層に接するずい道
・腐泥層に接する井戸の内部
・石炭、亜炭、硫化鉱、鋼材、くず鉄、原木、チツプ、乾性油、魚油その他空気中の酸素を吸収する物質を入れてあるタンク、船倉、ホツパーその他の貯蔵施設の内部
第2種酸素欠乏危険場所に該当する場所
・海水が滞留しており、若しくは滞留したことのある熱交換器、管、暗きょ、マンホール、溝若しくはピット(以下「熱交換器等」という。)
※ 酸素の存在しない場所に有機物が存在すると、嫌気性菌である硫酸塩還元菌が増殖して硫化水素を発生するおそれがある。
・し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きょ、マンホール、溝又はピットの内部
ホッパー
ホッパーとは、生コンクリートや土砂などを仮受けし、目的の場所へ流し込む(落とす)ための装置。 ホッパともいわれる。 生コンクリートなどを流し込む上部が広く、下部の出口に向かってすぼまっていく漏斗(ろうと)のような形状で、建設現場や工事現場などでよく使われる。
酸素欠乏症状
・空気中の酸素濃度が16%以下になると、頭痛、吐き気、作業能力低下などの自覚症状が現れる。
・10%以下になると、意識消失やけいれんが現れる。
空気中の酸素濃度と健康状態との関連
21% 通常の空気の状態である。健康障害は現れない。
18% 安全限界である。連続換気が必要。
16% 頭痛、吐き気、作業能力低下などの自覚症状が現れる。
12% めまい、筋力低下が現れる。このため、本人が酸欠状態に対応することが困難となる。
10% 意識消失やけいれんが現れる。
8% 失神昏倒する。7~8 分以内に死亡のおそれがある。
6% 瞬時に昏倒する。呼吸が停止し、死亡に至る。
硫化水素
発生機序
・硫酸イオン(SO42-)及び有機酸(乳酸、プロピオン酸、酢酸等=硫酸塩還元菌の炭素源)が存在し、嫌気性の環境になり、硫酸塩還元菌が存在していると、硫酸塩還元菌により硫化水素が発生する。水のたまる場所があると、嫌気性環境が一層促進される。
・その発生機序は、嫌気性菌である硫酸塩還元菌が、酸素の存在しない条件下で有機物の分解産物である有機酸を栄養源とし、硫酸イオン中の酸素を呼吸源として増殖する。その過程で、硫酸イオンが還元されて、硫化水素が生成する。
・硫化水素は、自然界では火山ガスや温泉などから放出されている。
・具体的な例としては、温泉などの硫黄等を含有する地層や炭酸水を湧出又は湧出するおそれのある地層の内部、腐敗した魚貝類や海水が滞留しているピット・マンホ―ル等の内部、し尿、汚水等を入れてあり又は入れたことがあるピット・マンホール等の内部等などで、硫黄が嫌気性細菌によって還元されて硫化水素が発生するケースがある。
性状
・無色の可燃性ガスで、独特の臭気(孵卵臭)があるが、高濃度(50~150ppm以上)になると臭気を感じなくなるので注意が必要である。
・融点は-85℃、沸点は-60℃で、通常はガス状である。蒸気圧は118.75×105と高い。
・蒸気密度(空気 = 1)は1.19で空気よりやや重く、ピットなどに滞留しやすい。
・水への溶解度は5g/Lとよく溶け、脂溶性が高いため、生体膜を容易に通過する。
・加熱すると激しく燃焼又は爆発し、有毒なガスを生じる。
健康障害
・水溶性が高く、肺胞に到達し肺水腫をきたす
・吸入気中の硫化水素の濃度が100ppmを超える連続ばく露では、気管支炎、肺炎、肺水腫による窒息が生じて死亡することがある。
・吸入気中の硫化水素の濃度が1000ppmに達すると、昏倒、呼吸停止し死亡に至ることがある。
・眼の症状として、結膜炎や角膜損傷が知られている(硫化水素が眼の粘膜の水分に溶けて硫化アルカリに変化して角膜、粘膜の組織破壊を引き起こす)。
・目のかゆみ、痛みなどを感じ、視野が不明瞭、まぶしさが増す
(竜が 屁こき 意識消失)
硫化水素濃度と健康影響との関連
・0.3 ppm 程度の濃度の硫化水素には、「卵の腐ったような独特の臭気」がある
・5ppm 不快臭
・10ppm 許容濃度(眼の粘膜の刺激下限値)
・20ppm 気管支炎、肺炎、肺水腫
・20~30ppm 臭細胞が疲労して臭覚がマヒし始める
※ 100~300ppmになると2~15分で嗅覚神経麻痺により、かえって臭いが感じられなくなることに留意する必要がある。
※ 350ppm 生命の危険
※ 700ppm 呼吸麻痺、昏倒、呼吸停止、死亡
酸素欠乏症及び硫化水素中毒を防止するために必要な対策
1 酸素濃度等の測定
酸素欠乏が予測される場所で作業を行う場合は、その都度、事前に酸素濃度及び硫化水素濃度を測定し、酸素濃度が 18%以上であること及び硫化水素濃度が10ppm 未満であることを確認する。
2 換気等の実施
酸素欠乏の危険が予測される場所等で作業を行う場合は、まず酸素欠乏危険場所の外側から、送風機等で外気を酸素欠乏危険場所の内部に吹き込み、酸素濃度等の測定をして、充分な酸素濃度があることを確認したうえで、内部に立ち入る。
作業が終了するまで送気を継続する。
3 保護具の使用等
酸素欠乏の状態等であるにもかかわらず、換気等を行うことが困難な場合は、呼吸用保護具(空気呼吸器、送気マスク等)を使用する。硫化水素等の有害物が発生しており、又は発生するおそれがある場合は、呼吸用保護具に加えて保護眼鏡等を使用する。
4 適切な作業の実施
(1)作業主任者の選任
作業主任者を選任して、①作業の方法の決定及び労働者の指揮、②作業を開始する前及び作業終了後の作業場所の酸素の濃度の測定、③測定器具、換気装置、空気呼吸器等の機器又は設備の点検、④空気呼吸器等の使用状況について監視等を行わせる。
(2)特別教育の実施
酸素欠乏危険作業に従事する労働者に対して、特別教育を行った 後に業務に就かせる。
(3)監視人等の配置等
万一の事態に備え、酸素欠乏等危険場 所以外の外側に監視人等を配置し、①作業の進行状況や換気の状況、保護具の使用状況、作業員の異常等の監視、②作業員に異常を認めたときの、作業の中止と退避の指示・命令、③作業員が意識を失い倒れる等の場合における緊急要請、送風機等による外気の吹き込みなどの対処を行わせる。
5 立入禁止等
酸素欠濃度が 18%に満たない場所又は硫化水素濃度が10ppmを超える場所について は、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示する。
作業環境測定
事業者は、法令に定める酸素欠乏危険場所に係る作業場について、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の酸素(第2種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあっては、酸素及び硫化水素の濃度を測定しなければならない。
事業者は、この測定を行ったときは、そのつど、測定日時、測定方法、測定結果など所定の事項を記録して、これを3年間保存しなければならない。
(作業は3,酸素も3)
酸素欠乏症等の防止
ガス漏出防止措置
事業者は、不活性気体を送給する配管のバルブ若しくはコツク又はこれらを操作するためのスイツチ、押しボタン等については、これらの誤操作による不活性気体の漏出を防止するため、配管内の不活性気体の名称及び開閉の方向を表示しなければならない。
溶接に係る措置
【酸素欠乏症等防止規則】(溶接に係る措置)
・第21条 事業者は、タンク、ボイラー又は反応塔の内部その他通風が不十分な場所において、アルゴン、炭酸ガス又はヘリウムを使用して行なう溶接の作業に労働者を従事させるときは、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
一 作業を行なう場所の空気中の酸素の濃度を18パーセント以上に保つように換気すること。
二 労働者に空気呼吸器等を使用させること。
※ アルゴン
窒素、酸素に次ぎ大気中に3番目に多く存在する気体ですが、その比率はわずか約0.93%程度です。
アルゴンはレア(稀)なガスの意味である希ガスの一種に数えられます。
アルゴンは、語源であるギリシャ語の「怠惰な」「なまけもの」の意味にあるように、他の物質と反応しない不活性な物性を持っています。
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