正常値
血清カルシム正常値:8.5-10.5㎎/dL
Payne(ペイン)の補正式
・「血清カルシウム値」として出てくるのは、「イオン化カルシウム(Ca2+)」(約50%)のみならず、「タンパク結合カルシウム」(約40%)、クエン酸、リン酸、炭酸などと「複合体を形成したカルシウム」(約10%)の「総カルシウム濃度」である。
・一方、生物学的に活性のあるのは「イオン化カルシウム」(Ca2+)である。
・低タンパク血症では、タンパク結合カルシウムが減少し、その分イオン化カルシウム濃度が上昇する。そのため、検査値は正常でも高カルシウム血症の症状が出る。
高カルシウム血症の治療開始基準
「血清カルシウムが14.0mg/dL以上の場合」
または
「血清カルシウムが12.0mg/dL以上で、症状がある場合」
高カルシウム血症の症状
・腎:口喝、多飲、多尿、脱水
腎尿細管における水再吸収障害による高度脱水を認める
・消化器:食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛、
・神経:意識障害、筋力低下
・循環器:QT延長
高カルシウム血症の原因
・原発性副甲状腺機能亢進症
・悪性腫瘍(肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、成人T細胞白血病(南西地方))
・サルコイドーシス(肉芽腫細胞からビタミンDが分泌されるため)
・薬剤性
ビタミンD
リチウム(副甲状腺機能亢進を誘発)
ビタミンA(骨吸収促進)
サイアザイド(遠位尿細管でのカルシウム再吸収促進)
テオフィリン(アデニル酸シクラーゼが不活性化されず、PTH作用が増強される)
検査項目
Ca
P(VitDで上昇、PTHで低下)
PTH
PTH rP
1, 25水酸化ビタミンD
ALP(骨転移→多発性骨髄腫、乳癌、前立腺癌)
24時間蓄尿カルシウム、クレアチニン
→FECaの計算(副甲状腺機能亢進では>1%)
FECa(%)={尿Ca(mg/dl)/ 尿クレアチニン(mg/dl)}×{血清クレアチニン (mg/dl)/血清Ca(mg/dl)}×100
原因診断フロー
・まずは問診で薬剤性の除外
・次いで蓄尿でFECaを計算
FECa<1%の場合:
「家族性または後天性低Ca尿性高Ca血症」と診断
↓
FECa>1%の場合:
・FECa>1%で、PTH上昇していれば「原発性副甲状腺機能亢進症」
・PTH低下、かつPTHrP上昇していれば「悪性腫瘍に合併する高Ca血症」
・1, 25水酸化ビタミンDが高値の場合は「慢性肉芽腫症(サルコイドーシス)」「悪性リンパ腫」等
・上記でも診断がつかない場合、「広範な骨破壊」「甲状腺機能亢進症」「副腎不全」などを考慮しホルモン検査実施
治療
生食大量投与
尿量200mⅬ/時以上目標
2000~4000mⅬ/日を3~4日間
カルシトニン(エルシトニン®):
速効性が期待できる(破骨細胞に働いて骨吸収低下)
Rp)
カルシトニン(エルシトニン®)
1回40単位筋注、12時間毎1日2回3~7日間
または
1回40単位を生食50~100mLに溶解し1~2時間ペースで点滴静注
、12時間毎1日2回3~7日間
フロセミド(脱水を補正した後)
1回20~40㎎静注、2~4時間毎に
※サイアザイド系はCa排泄を抑制するため禁忌
ビスホスホネート薬
・上記で治療困難な場合
・ゾメタ
・適応は造血系腫瘍以外の悪性腫瘍を原因とするもの
Rp)
ゾレドロン酸水和物(ゾメタ®)
4㎎注1Vを生食100mLに溶解し、15分以上かけて単回点滴静注
(再投与は少なくとも1週間あける)
・速効性はなく効果発現までに2日かかるので、速効性のあるカルシトニン製剤と同時投与してもよい
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