小児腹痛診察時の心得
・胃腸炎とゴミ箱診断しないこと(嘔気、嘔吐、水様下痢の3つがそろって初めて胃腸炎といえる)
・6時間以上続く激しい腹痛があるのに、腹膜刺激症状がない場合は、「絞扼性腸閉塞」や「血管障害」による致死的な腹痛の可能性があり、造影CTでないと診断できない。
※ 診断のため、浣腸は原則として行うこと
1~2ml/㎏/回
例)
乳児:5~10ml
幼児:10~30ml
学童:30~60ml
反応がない場合はもう一度同一量で実施
※ 鼠径部、陰部をかならず確認すること(ヘルニア、精巣)
小児腹痛6大疾患
虫垂炎
・「右下腹部触診にて少しでも疼痛がある」場合は鑑別に上げること。
・学童>思春期>乳幼児
・腹痛が嘔吐に先行(腹痛→嘔吐→右下腹部痛→発熱の順)することが多い
・
<Pediatric Appendicitis Score(PAS)>
右下腹部に移動する痛み:1点
右下腹部痛:2点
咳・跳躍・打診による叩打痛:2点
嘔気・嘔吐:1点
食欲不振:1点
発熱(38℃以上):1点
白血球数増加(10000/mm3以上):1点
左方移動(好中球7500/mm3以上):1点
↓
↓
≦3点:帰宅が可能で翌日再評価
4-6点:は2次入院施設での絶食下における4-8時間毎の診察と検査あるいは画像検査による評価
7点≦:急性虫垂炎と診断し手術対応可能な施設へ紹介
腸重積
・2歳未満、多くは10か月前後の乳児
・回腸末端が結腸に重積するパターン(回腸結腸型)がほとんど
・不機嫌、嘔吐、間欠的啼泣、血便
・腹部エコーで、回盲部から上行結腸、横行結腸、下行結腸に沿って「コの字」にプローブを当てて走査する
・右上腹部腫瘤(腹部エコーでtarget sign、pseudokidney sign)
鼠径ヘルニア
・1歳以下男児
・陥頓した場合、3~4時間で壊死に陥る(いつから不機嫌になったか確認)
・ほぼ100%完納可能である
精巣捻転
参照:急性陰嚢症
・思春期に多いが、あらゆる年齢で発症する
・通常は突然発症。
・朝勃ち、外傷
・以前にも同様の症状があることがある
・持続性の下腹部痛(精巣はTh10~12支配。Th10~Th12の関連痛として下腹部痛が出現)
・腫脹、精巣の位置異常、圧痛(自分でつまんでもらってもよい)
・診察は立位で。精巣の軸が横になっている。
・精巣挙筋反射(上がって下がる)が消失
・エコーで「ねじれ」「血流低下(下から両方同時に当てる)」
・観血的整復が原則。冷却して泌尿器科へ搬送
IgA血管炎(アレルギー性紫斑病)
・「ヘノッホ・シェーンライン(Henoch-Schonlein)紫斑病」や「アナフィラクトイド紫斑病」などともよばる
・3~10歳
・3~10歳
・3大症状:「皮膚症状」「関節症状」「消化器症状」
・原因:感染(ウイルス、細菌)、アレルギー(薬、食物)、ワクチン(インフルエンザ)
・およそ50%の症例で、発症の1~2週前に風邪などの先行感染がある。
・インフルエンザワクチン接種後もある
・症状:
・症状:
局在のない腹痛(紫斑に先行する)
下血
紫斑(隆起性、触知できる)腹痛の後に出現することがある
関節痛(膝関節、足関節が多い)
限局性浮腫(頭皮、顔、手背、足背、陰嚢)
・紫斑は下腿に多い(重力の影響による)
・IgA腎症を合併することがある(成人例に多い)
・血尿、タンパク尿に注意

絞扼性腸閉塞
・症状の割に所見に乏しい時には、血流障害を疑う(筋性防御なし)
・6時間以上腹痛続く→造影CT考慮
コメント