末梢動脈疾患ガイドライン
疾患概念
・末梢動脈疾患(peripheral arterial disease、PAD)とは厳密には冠動脈以外の血管の閉塞性疾患のことであり、下肢の閉塞性動脈硬化症は下肢閉塞性動脈疾患(Lower extremity arterial disease;LEAD)と呼ばれる。
・以前は、「閉塞性動脈硬化症(ASO)」あるいは「下肢慢性動脈閉塞症」と呼ばれていたが、現在は、その原因に関係なく国際的に「末梢動脈疾患」に統一された。
・LEADは閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans、ASO)、Buerger病など多彩な疾患を含む概念である(喫煙と関係の深いBuerger病も末梢動脈疾患に含まれる)。
疫学
・危険因子は「加齢」「糖尿病」「喫煙」
・無症候が20~50%と多い
症状
・非典型的な下肢痛(最多:40~50%)
・間欠性跛行(10~30%)
疼痛は臀部、大腿、下腿、足趾など広範囲に及ぶ
歩行距離短縮という訴えもある
・無症候が20~50%と多い
・足背動脈拍動の低下や消失(これらがなければPADは否定的)
・患者は冠動脈疾患(38.4%)や脳血管疾患(9.5%)を合併するので、検索が必要
間欠性跛行の鑑別
PAD
・片側性
・疼痛部位はふくらはぎ
・冷感を伴うことが多い
・糖尿病、脂質異常症や高血圧などの動脈硬化の危険因子や脳血管障害や虚血性心疾患の合併が多くみられる
LSCS
・両側性
・臀部から下肢全体にかけて疼痛の症状
・前屈位にて症状が緩和
・自転車で改善
・内科的併存症については,高血圧や糖尿病が腰部脊柱管狭窄症の危険因子であることが複数の研究が報告し
Fontaine分類
下肢虚血の進展過程に応じた病態の重症度分類。4段階に分けられる
Ⅱ度:間歇性跛行
Ⅲ度:安静時疼痛
Ⅳ度:潰瘍や壊死を伴う
Ⅲ-Ⅳ度が重症虚血下肢とされ、従来治療に対して抵抗性の場合、血管再生医療を考慮する対象となる。
検査
① 足関節上腕血圧比(Ankle-Brachial-Index;ABI)
ABIは、足関節収縮期血圧を左右の上腕収縮期血圧の高い方の圧で除した値をいう
正常:1.0~1.3
0.9以下で異常
・正常であれば、足関節血圧は上腕血圧より10~20mmHg程度高値であるために、ABIは1.0より大きくなる。
・ABIは閉塞性動脈硬化症(ASO)等の末梢動脈疾患(peripheral arterial disease;PAD)の診断および重症度評価の指標とされる。
・糖尿病や透析患者などでみられる中膜石灰化を伴う動脈硬化では、見かけ上かえってABIが上昇することがある。
2.上腕動脈-足首動脈間脈波伝播速度( brachial-anklepulse wave velocity;baPWV)
・脈波を体表面より測定可能な部位2カ所で記録し、2点間の距離と脈動の時間差から算出される値。
・血管が硬いほど(血管弾性率)、血管壁が厚いほど(血管壁厚)、血管内腔が狭いほど(血管径)、脈波伝播速度は速くなる。
・正常値:1400m/s 以下
治療
・運動療法
・抗血小板薬内服(アスピリン100㎎)
・血管内治療
予後
・5年後に重症下肢虚血に進行するのは1~2%程度
・5年後の死亡率は15~30%と比較的に高い
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