ガイドライン
基準値
・尿潜血:(ー)
・沈査:赤血球<4
血尿の定義
健診での判定基準
(+-):B判定(軽度異常)
(1+):C判定(尿沈渣5/HPF:「顕微鏡的血尿」に相当)
(2+):D2判定(異常と判断→紹介)
血尿の原因
糸球体外由来の血尿
・腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌などの悪性腫瘍
・尿路結石
10mm未満なら自然排石が期待できる
・膀胱炎(出血性膀胱炎)
・前立腺炎
・前立腺肥大症
・多発性嚢胞腎
・腎梗塞
(心房細動などの血栓塞栓症のリスクのある患者で、急性の側腹部~背部痛をきたした場合)
・腎結核、膀胱結核
・ナットクラッカー症候群
左腎静脈が、腹部大動脈と上腸間膜動脈の間に挟まれることで、腎臓で血液がうっ滞し血尿を引き起こす状態
糸球体由来の血尿
・糸球体腎炎
(尿蛋白0.5g/gCr以上、または腎機能低下がある場合)
・菲薄糸球体基底膜症候群(良性家族性血尿)
・IgA腎症
・遺伝性腎炎症候群(Alport症候群)
・腎盂腎炎
・その他(激しい運動、月経血の混入、外傷など)
血尿診断アルゴリズム①:「肉眼的血尿」の場合
1)早期に腎臓内科への受診が勧められる状態
・cola-like urine(コーラ色の褐色尿;糸球体性の肉眼的血尿を示す)
・高度蛋白尿(0.5g/gCr以上) および/または 進行性の腎機能低下
・尿路感染症を疑う所見を欠く発熱
・呼吸器症状や皮膚症状など他の全身症状
・腎後性因子が否定される腎機能障害
2)泌尿器科への紹介
・「上記以外の肉眼的血尿」は高リスク群に準じて、泌尿器科へコンサルトする
2.肉眼的血尿のアルゴリズム
※ 肉眼的血尿は「高リスク群」に準じる。基本的に全例「泌尿器科コンサルト」
尿沈渣で糸球体性と非糸球体性の鑑別
・「尿路系悪性腫瘍の検索」が必要
→肉眼的血尿は基本的には全例「泌尿器科コンサルト」
・変形赤血球、病的円柱があれば糸球体性を考える
(急速進行性糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎の可能性)
・血尿の際、尿蛋白は参考程度
・凝血塊があれば、非糸球体性と考える
鑑別疾患
① 感染症(膀胱炎、尿道炎(淋菌、クラミジア)、前立腺炎)
・
②悪性腫瘍
・蓄尿時エコーと尿細胞診提出を行う
③ 糸球体性肉眼的血尿
・急速進行性糸球体腎炎
・急性糸球体腎炎
・慢性糸球体腎炎(IgA腎症)
血尿診断アルゴリズム②:「顕微鏡的血尿」の場合
尿沈渣で「赤血球≧5個/HPF」(high power field:強拡大の視野.400倍)
(D2判定)
↓
良性疾患の鑑別、尿検査再検
・尿沈渣法で顕微鏡的血尿が確認された場合、まずは尿路感染、月経、激しい運動、外傷、直近の泌尿器科的処置の有無など、良性疾患に伴う血尿を病歴・身体所見・血液検査結果などから鑑別する。
・上記が疑われた場合は原因に応じた治療を行い、適切な期間を置いた後に尿検査を再度実施する。
・良性疾患による血尿が否定された場合、腎臓内科・泌尿器科的疾患の鑑別を行っていく。
血尿患者を腎臓内科専門医へ紹介する判断基準
・ 蛋白尿を伴う場合
・ 尿沈渣で変形赤血球、細胞円柱が存在する場合
・ 問診、身体所見で腎炎を疑わせる場合(発熱、関節痛、体重減少、浮腫、紫斑、炎症反応上昇)
・ 腎機能低下(eGFR<45、CKDステージG3b未満)を伴う場合
リスクに応じた尿路系悪性腫瘍の鑑別アルゴリズム
基本原則:
・一般医家において、均一赤血球(非糸球体性血尿)による顕微鏡的血尿を認めた場合は泌尿器科専門医へコンサルトする。
専門科へのコンサルトが難しいセッティングの場合:
・「低リスク」であっても「腹部CT/腹部エコー」と「尿細胞診(早朝尿×3回)」を実施
→これで異常があれば泌尿器科へ紹介(膀胱鏡や画像検査へ)
尿路系悪性腫瘍のリスク因子(「血尿ガイドライン2023」)
【低リスク】(以下のすべてを満たす)
男性<40歳、女性<50歳、尿RBC5-10/hpf、危険因子なし
※危険因子(本邦ガイドライン):
有害物質への曝露、膀胱刺激症状、フェナセチンなどの鎮痛薬多用、骨盤内放射線照射の既往、シクロホスファミドの投与歴、尿路への異物の長期留置
【中リスク】(以下のいずれかに該当する)
男性40~59歳、女性50~59歳、尿RBC 11-25/hpf、1つ以上の危険因子あり
【高リスク】(以下のいずれかに該当する)
男女とも60歳以上、尿RBC>25/hpf、喫煙歴あり(≧30pack-year:{1日の喫煙本数/20本}×喫煙年数)、肉眼的血尿の既往あり
一般医家の対応
「低リスク」の場合
・一般医家において、均一赤血球(非糸球体性血尿)による顕微鏡的血尿を認めた場合は泌尿器科専門医へコンサルトする。
・ただし「低リスク群」では、一般医家において、悪性腫瘍のリスクは非常に低いことを説明し、同意が得られたら、即座に精査を行わず半年以内に再検とすることも可能である(BQ 泌-2)。
「中リスク」「高リスク」の場合
・尿細胞診、腹部・膀胱エコーに加え、膀胱鏡検査(泌尿器科コンサルト)を考慮
注)専門科へのコンサルトが難しいセッティングの場合:
・「低リスク」であっても「腹部CT/腹部エコー」と「尿細胞診(早朝尿×3回)」を実施
→異常があれば、泌尿器科コンサルトが必要
注)尿路系悪性腫瘍の除外
※ 尿細胞診は感度34%、特異度98%で、陰性でも膀胱がんを否定できない
↓
糸球体性血尿が否定的であれば、悪性腫瘍による血尿の可能性を考慮
リスク因子:「40歳以上の男性」「喫煙」「有害物質への曝露(染料工業、皮革工業、ゴム工業の従事者)」「肉眼的血尿」
↓
エコー、CT(造影も考慮)を行い、積極的に膀胱鏡検査も検討すること。
高齢者の血尿の鑑別
・高齢であれば,悪性腫瘍は必ず鑑別に挙げる.
・尿細胞診を複数回(一般には3回)施行し,泌尿器科にコンサルトし、経尿道的内視鏡検査で尿管,膀胱を観察する必要がある。
・血尿と蛋白尿を認め、腎機能障害を伴っている場合は「急速進行性糸球体腎炎」の鑑別は必ず行う必要がある(→血清補体価、抗核抗体、MPO-ANCA、PR3-ANCA、抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体の測定)
抗血小板薬、抗凝固薬を服用している顕微鏡的血尿患者に対する対応
・抗血小板薬または抗凝固薬を服用している患者において顕微鏡的血尿が認められた際に、服用が原
因であると判断することは困難であるため、これらの薬を服用していない患者と同様に評価を行う
必要があり、リスク分類に基づく精査が考慮される。
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