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慢性腎臓病(CKD):定義、治療、腎臓専門医への紹介基準

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参照ガイドライン

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023(日本腎臓病学会)

 

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定義

下記の①,②のいずれか,または両方が 3 カ月以上持続する場合、CKDと診断する。

① 尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか。
特に 0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30mg / gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要
② GFR<60 mL/分/1.73 m²

 日常臨床では,CKD は『 0.15 g/gCr 以上の蛋白尿と GFR<60 mL/分/1.73 m²』で診断する。

 日常診療では GFR は、血清クレアチニン(Cr)と年齢、性別より日本人の GFR 推算式
を用いて「推算 GFR(eGFR)」として評価する .

 

eGFR・eCCrの計算 | 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会

 

※ 血清シスタチンCに基づくGFR(eGFRcys)

・クレアチニンは筋肉量に比例するため、長期臥床、るい痩、四肢欠損などでは血清クレアチニン値が低値となる、eGFRは高く推算される(血清クレアチニン値が逆数となるため)

・一方血清シスタチンCに基づくGFR(eGFRcys)がある。

・血清シスタチンCは、筋肉量や運動の影響を受けにくい。そのため長期安静臥床による骨格筋量の減少や、逆にリハビリ・運動療法による筋肉量の増加が想定される症例では、血清クレアチニンによるeGFRのみならず、eGFRcysも測定することが望ましい。

eGFR・eCCrの計算 | 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会

 

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初診時の対応

① 急性か、慢性か?

・ますは急性なのか、慢性なのかを聴取する。

 

② その原因は何か?

3大原因

・糖尿病

・腎硬化症

・糸球体腎炎(経過が早い、血尿+高度の蛋白尿で疑う→専門医へ紹介が必要)

 

診断に必要な検査

血液検査(糖尿病検査を含む)

 

尿検査

・尿沈渣

・尿蛋白定定量、尿中Cr濃度

・尿蛋白定量(g/日)(尿蛋白/Cr比(g/gCr)で代用)

糖尿病では尿アルブミン定量(mg/日)(尿アルブミン/Cr比(mg/gCr)で代用)

・eGFR計算(mL/min/1.73m2)

※血尿+高度の蛋白尿では「糸球体腎炎」を疑う(→専門医へコンサルト)

 

腹部エコー

・腎後性、多発嚢胞腎の確認

 

CKDの重症度分類

・CKD の重症度は「原疾患(Cause)」「腎機能(GFR)」「蛋白尿・アルブミン尿(Albuminuria)」に基づく「CGA 分類」で評価する

・eGFRは腎臓の排泄機能を示し、尿蛋白は糸球体障害の程度を表している。

・CKDはeGFRにより6段階に分類され、腎機能と尿蛋白の程度と末期腎不全、心血管死リスクを踏まえたCKDステージで分類される。

 

原疾患の例

糖尿病、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、多発性嚢胞腎、不明、その他(ANCA関連血管炎、紫斑病性腎炎、ループス腎炎(SLE腎炎)、IgG4関連疾患(IgG4関連腎臓病)など)

 

表記例:

「糖尿病 G2A3」

「慢性腎炎 G3bA1」

「腎硬化症疑い G4A1」

「多発性囊胞腎 G3aA1」

「原因不明の CKD G4A2」

などと表記する

 

重症度

・「重症度」は色で示される。緑 のステージを基準に、 ⇒ オレンジ ⇒ 赤 の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。

・緑色の部分に対して赤色のところは、末期腎不全による透析導入の危険が数百倍から数千倍になる

 

 

 

かかりつけ医での治療

生活習慣改善

・禁煙指導

・体重管理(BMI<25)

・運動療法(Mets3~5)

 

食事制限(塩分、蛋白、エネルギー)

塩分制限:3g/日以上、6g/日未満

・3g/日未満の過度の減塩はしない(低栄養を招く危険性、GFR低下の危険性があるため)

 

蛋白制限

・G3aまで:0.8-1.0g/標準体重/日

・G3b以降:0.6-0.8g/標準体重/日

 

エネルギー

25-35Kcal/標準体重/日

糖尿病、肥満などを合併している場合は、ガイドラインを参考に病態に応じて調整

 

CKDの薬物療養

腎保護作用薬

SGLT-2阻害薬

・DKDでは基本的に投与(ジャディアンス®、フォシーガ®)

尿蛋白陽性の場合は、DMの有無に関わらず投与を考慮(フォシーガ®)

虚弱高齢者」、「飲水1500mL/日ができない人」では投与は見合わせる

 

ARB(ACE-I)

尿蛋白が陽性なら、血圧が高くなくても投与する

・腎機能が悪くても、常用量で投与を目指す。

 

CKD患者の血圧コントロール

・CKDを合併する高血圧患者は、「糖尿病の有無」「尿蛋白」の有無によって推奨される降圧目標、降圧薬が変わる

血圧コントロール目標
75歳未満
※ 糖尿病ありの場合、尿蛋白の有無に関係なく:130/80未満
※ 蛋白尿が陽性の場合、糖尿病の有無に関係なく:130/80未満
※ 糖尿病、尿蛋白とも陰性の場合:140/90未満

75歳以上
※ 糖尿病、尿蛋白に関係なく:150/90未満

CKD患者への推奨降圧薬
DKD(糖尿病性CKD):130/80未満目標
※ 糖尿病(+)で蛋白尿(+):
・ACE-IまたはARB
・SGLT2阻害薬併用も考慮(糖尿病あり→ジャディアンス、糖尿病なし→フォシーガ)

※ 糖尿病(+)で蛋白尿(ー):
通常の第一選択薬(RA系阻害薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬)

non-DM CKD(非糖尿病性CKD):
※ 糖尿病(ー)で蛋白尿(+):130/80以下目標
・ACE-IまたはARB
・SGLT-2併用

※ 糖尿病(ー)で蛋白尿(ー):140/90以下目標
・通常の第一選択薬(RA系阻害薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬)

 

参照:CKD患者への推奨降圧薬

 

 

参考)降圧目標

 

 

 

血糖値管理

・目標HbA1c<7.0%

・まずはメトホルミン(使える容量で)(ただしeGFR<30:ステージG4、G5で禁忌)

・その他、DPP-4(トラゼンタ5㎎)

・Alb尿あればSGLT2阻害薬(糖尿病あり→ジャディアンス)

 

 

脂質管理

eGFR<60+LDL>120でスタチンの適応

 

目標値
冠動脈疾患既往あり

・LDL-C<100

・non-HDL-C1<130

冠動脈疾患既往なし

・LDL-C<120

・non-HDL-C<150

 

腎性貧血管理

・11.0未満が治療開始基準

・治療目標:Hb 10-11.5(13以上では有害)

・鉄剤補充開始基準

フェリチン<100ng/mL

TSAT<20%

・ミルセラ®が第一選択

 

カリウム管理

・高K血症がある場合、1500mg/日未満

・アーガメイト®、カリメート®:第一選択

便秘の副作用

・ケイキサレート®:第2選択

高Naの副作用

・ロケルマ®

高額

 

アシドーシス管理

・eGFR<30から疑う(静脈血ガスでもOK)

・NaーK<36で疑う(アニオンギャップ上昇)

・治療介入基準:HCO3-<21mmol/L(またはNa-Cl<36)

・炭酸水素ナトリウム(重曹):1.5g/日より開始、基準値の24mmol/Lを目指す。

 

ミネラル管理

・Ca、P正常値へのコントロール(活性型ビタミンD製剤)

・P制限(食事療法、P吸着薬)

 

腎臓専門医への紹介

腎臓専門医への紹介基準

① 高度の蛋白尿(尿蛋白/クレアチニン比0.50g/gCr以上、または2+以上)
② 蛋白尿と血尿が共に陽性(1+以上)
③ eGFR低下(40歳未満では60未満、40歳以上では45未満)
④ 3か月以内に30%以上の腎機能低下を認める場合

 

 

腎臓専門医・専門医療機関への紹介目的(原疾患を問わない):

1)血尿、蛋白尿、腎機能低下の原因精査

2)進展抑制目的の治療強化(治療抵抗性の蛋白尿(顕性アルブミン尿)、腎機能低下、高血圧に対する治療の見直し、二次性高血圧の鑑別など)

3)保存期腎不全の管理、腎代替療法の導入

 

詳細:

・CKDには「IgA腎症」や「ループス腎炎」など、腎臓専門医による治療を要する腎疾患が含まれるため,蛋白尿と血尿を両方認めるCKD患者は腎臓専門医もしくは地域の専門医療機関に紹介する。

・またGFR<45(G3b~5)または蛋白尿区分A3では腎臓専門医・専門医療機関に紹介する。

40歳未満やA2区分(蛋白尿>0.15g/gCr)ではGFR 45~59(G3a)でも紹介することが望ましい.

65 歳以上であっても eGFR が 45 より低値では,総死亡および ESKD (end-stage kidney disease: 末期腎不全)のリスクが上昇することから、eGFR 45 未満の場合には腎臓専門医・専門医療機関への受診が推奨される 。

・紹介基準に該当しなくても,急速な腎機能低下(3か月以内に30%以上の腎機能悪化)などを認めれば,速やかに腎臓専門医・専門医療機関に紹介することが重要である。

 

紹介に際し必要な情報

① 基礎疾患(DM、HTなど)

② 腎機能、尿所見の経時的推移

③ ADL、認知能力、ACP

 

 

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