参照ガイドライン
エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018(日本腎臓病学会)
定義
下記の①,②のいずれか,または両方が 3 カ月以上持続する場合、CKDと診断する。
特に 0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30mg / gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要
② GFR<60 mL/分/1.73 m²
※ 日常臨床では,CKD は『 0.15 g/gCr 以上の蛋白尿と GFR<60 mL/分/1.73 m²』で診断する。
※ 日常診療では GFR は、血清クレアチニン(Cr)と年齢、性別より日本人の GFR 推算式
を用いて「推算 GFR(eGFR)」として評価する .
※ 血清シスタチンCに基づくGFR(eGFRcys)
・クレアチニンは筋肉量に比例するため、長期臥床、るい痩、四肢欠損などでは血清クレアチニン値が低値となる、eGFRは高く推算される(血清クレアチニン値が逆数となるため)
・一方血清シスタチンCに基づくGFR(eGFRcys)がある。
・血清シスタチンCは、筋肉量や運動の影響を受けにくい。そのため長期安静臥床による骨格筋量の減少や、逆にリハビリ・運動療法による筋肉量の増加が想定される症例では、血清クレアチニンによるeGFRのみならず、eGFRcysも測定することが望ましい。
診断に必要な検査
・血液検査
・尿検査
血尿
尿蛋白定定量、尿中Cr濃度
尿蛋白定量(g/日)(尿蛋白/Cr比(g/gCr)で代用)
糖尿病では尿アルブミン定量(mg/日)(尿アルブミン/Cr比(mg/gCr)で代用)
・eGFR計算(mL/min/1.73m2)
CKDの重症度分類
・CKD の重症度は「原疾患(Cause)」「腎機能(GFR)」「蛋白尿・アルブミン尿(Albuminuria)」に基づく「CGA 分類」で評価する
・eGFRは腎臓の排泄機能を示し、尿蛋白は糸球体障害の程度を表している。
・CKDはeGFRにより6段階に分類され、腎機能と尿蛋白の程度と末期腎不全、心血管死リスクを踏まえたCKDステージで分類される。
原疾患の例
糖尿病、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、多発性嚢胞腎、不明、その他(ANCA関連血管炎、紫斑病性腎炎、ループス腎炎(SLE腎炎)、IgG4関連疾患(IgG4関連腎臓病)など)
表記例:
糖尿病 G2A3
慢性腎炎 G3bA1
腎硬化症疑い G4A1
多発性囊胞腎 G3aA1
原因不明の CKD G4A2
などと表記する
重症度
・「重症度」は色で示される。緑■ のステージを基準に、黄■ ⇒ オレンジ■ ⇒ 赤■ の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。
・緑色の部分に対して赤色のところは、末期腎不全による透析導入の危険が数百倍から数千倍になる
治療
生活習慣改善
・禁煙指導
・体重管理(BMI<25)
食事制限
塩分制限3以上~6g未満/日
・3g/日未満の過度の減塩はしない(低栄養を招く危険性、GFR低下の危険性があるため)
蛋白制限
・G3aまで:0.8-1.0g/標準体重/日
・G3b以降:0.6-0.8g/標準体重/日
エネルギー
25-35Kcal/標準体重/日
糖尿病、肥満などを合併している場合は、ガイドラインを参考に病態に応じて調整
血圧コントロール
75歳未満
糖尿病なし
・尿蛋白A1区分:140/90未満
・尿蛋白A2,A3区分:130/80未満
糖尿病あり
・130/80未満
75歳以上
・150/90未満
・起立性低血圧やAKIなどの有害事象がなければ、140/90未満を目指す
(参照:高血圧を伴うCKD患者に推奨される降圧薬)
血糖値管理
・HbA1c<7.0%
脂質管理
冠動脈疾患既往あり
・LDL-C<100
・non-HDL-C1<130
冠動脈疾患既往なし
・LDL-C<120
・non-HDL-C<150
貧血管理
・Hb 11-13
・11未満が治療開始基準
・鉄剤補充開始基準
フェリチン<100ng/mL
TSAT<20%
カリウム管理
・高K血症がある場合、1500mg/日未満
アシドーシス管理
・治療介入基準:HCO3-<21mmol/L(またはNa-Cl<36)
・炭酸水素ナトリウム(重曹):1.5g/日より開始、基準値の24mmol/Lを目指す。
ミネラル管理
・Ca、P正常値へのコントロール(活性型ビタミンD製剤)
・P制限(食事療法、P吸着薬)
腎臓専門医への紹介基準
「かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準」
腎臓専門医・専門医療機関への紹介目的(原疾患を問わない):
1)血尿、蛋白尿、腎機能低下の原因精査
2)進展抑制目的の治療強化(治療抵抗性の蛋白尿(顕性アルブミン尿)、腎機能低下、高血圧に対する治療の見直し、二次性高血圧の鑑別など)
3)保存期腎不全の管理、腎代替療法の導入
詳細:
・CKDにはIgA腎症やループス腎炎など腎臓専門医による治療を要する腎疾患が含まれるため,蛋白尿と血尿を両方認めるCKD患者は腎臓専門医もしくは地域の専門医療機関に紹介する。
・またGFR<45(G3b~5)または蛋白尿区分A3では腎臓専門医・専門医療機関に紹介する。
・40歳未満やA2区分(蛋白尿>0.15g/gCr)ではGFR 45~59(G3a)でも紹介することが望ましい.
・65 歳以上であっても eGFR が 45 より低値では,総死亡および ESKD (end-stage kidney disease: 末期腎不全)のリスクが上昇することから、eGFR 45 未満の場合には腎臓専門医・専門医療機関への受診が推奨される 。
・紹介基準に該当しなくても,急速な腎機能低下(3か月以内に30%以上の腎機能悪化)などを認めれば,速やかに腎臓専門医・専門医療機関に紹介することが重要である。
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