病態
・ピロリ菌 (Helicobacter pylori;H. pylori)による感染症。
・感染経路として、古くは人の糞便が堆肥溜めから地下水に浸透し、井戸水からの感染とされていたが、現在の主な感染経路は、幼児期に近親者からの口移しなどによるとされている。
・幼児期は胃酸の分泌能が低いため、経口感染がおこりやすい
・医療・介護従事者での感染も多い
・感染しているほぼすべての人に胃の炎症(胃炎)がみられ、胃炎は胃全体に広がっていることもあれば、胃の下部(胃前庭部)だけの場合もある。
・ピロリ菌 は胃酸の分泌を増やし、胃酸に対する正常な胃の防御機能を損ない、毒素を産生することで、胃潰瘍が形成される一因となる。
・またピロリ菌(H. pylori)感染が長期に及ぶと萎縮性胃炎を経て、胃癌のリスクが高まる(参照:萎縮性胃炎)
・鉄欠乏性貧血、慢性腎不全の原因にもなる
・除菌治療後の再感染率は0.2%/年
検査
上部消化管内視鏡検査
① 鳥肌状胃炎
・胃粘膜に均一な小顆粒状隆起が密集して認められるもの
・若年者、感染早期に認められる
・未分化癌の発生母地として注目されている
・除菌により軽快する
② 萎縮性胃炎
・白色調の連続する粘膜下に樹枝状の血管が透けて見える
・ピロリ感染が慢性化した状態
③ 黄色腫
・白色~黄色調の丈の低い隆起性病変で、細顆粒状の表面構造
・ピロリ菌による高度の炎症に起因して発生する
尿素呼気試験
・感度、特異度ともに90%以上であり第一選択
・すでにPPIなどの胃酸抑制薬を服用している場合は偽陰性となるため、少なくとも2週間以上の休薬が必要
血中、尿中抗体検査
・すでにPPIなどの胃酸抑制薬を服用している場合
・血中、または尿中
注:「便中抗原検査」や「血清抗体検査」は特異度が低いため、偽陽性が多く出てしまう
→これらはスクリーニングには使用しないこと
除菌治療
※ 除菌により、胃がん発生を減らすことができる(しかし総死亡は減らない)。
1次除菌(除菌率70~80%)
ボノサップパック®(400)
・タケキャブ(20㎎) 1回1錠 1日2回
・サワシリン(250㎎) 1回3錠 1日2回(アモキシシリンAMPC)
・クラリス(200㎎) 1回1錠 1日2回
※ 1日1シートを朝夕食後の2回に分けて内服 / 7日間
参考(このサイトより引用):https://www.otsuka-elibrary.jp/product/di/bn4/photo/index.html
2次除菌
・ボノピオンパック 1日1シートを朝夕食後の2回に分服 / 7日間
副作用(全体の約50%にみとめる)
・水様下痢、軟便(10~30%)
・味覚異常
・皮疹(2~5%)
・出血性腸炎(ごくまれ)
※ 整腸剤は治療副作用である下痢症状を抑えるのみならず、除菌効果自体も高めることが報告されており、併用を検討してもよい。
効果判定
・治療後の効果判定検査は4週間以上あけて検査する。
・尿素呼気試験が第一選択、ついで便中抗原検査
除菌後の対応
・再感染率は年0.5%
・正常粘膜と比較して胃癌発生リスクがあるため(萎縮性胃炎:OR2.8、腸上皮化生:OR 3.4)、1~2年毎の内視鏡検査を勧める(ガイドラインでは年齢による上限に決まりはない)
・特に高度の萎縮性胃炎では毎年の内視鏡フォローが必要
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