TIAの定義(2019年10月:日本脳卒中学会)
神経機能障害のエピソードは、長くとも24時間以内に消失すること。
※画像上、梗塞巣のある TIA という概念は存在しない
(画像所見があれば、症状が24時間以内に消失しても「脳梗塞」の診断になる)
診察
・5%が2日以内に脳梗塞に進展するため危険。
・受診したら、まずは低血糖の除外から
意識消失を認める場合、失神との鑑別が必要
・意識消失時間は5~10分と長い(通常の失神は1~2分)
・意識消失の前後で神経脱落症状(片麻痺、構音障害、しびれ、眼前暗黒感、顔面神経麻痺、回転性めまい、小脳失調など)を認める
TIAの予後
・発症後90日以内に脳卒中を発症する危険度は15~20%
・脳梗塞発症例のうち、約半数は48時間以内に発症している。
ABCD2 score:TIA後の脳梗塞発症リスク評価
以下の5項目評価にて、脳梗塞に移行する危険性を判断する
A:age(60歳以上)
B:blood pressure(140/90)
C:clinical features(麻痺、構音障害)
D:duration of symptoms
D:diabetes
項目 | 点数 | |
A:age | 60歳以上 | No:0点 Yes:+1点 |
B:blood pressure | 収縮期血圧140mmHg以上 もしくは 拡張期血圧90mmHg以上 |
No:0点 Yes:+1点 |
C:clinical features | 片側の脱力 | +2点 |
脱力を伴わない発語障害 | +1点 | |
その他の症状 | 0点 | |
D:duration of symptoms | 10分未満 | 0点 |
10~59分 | +1点 | |
60分以上 | +2点 | |
D:diabetes | 糖尿病 | No:0点 Yes:+1点 |
リスク判定
TIA後2日以内の脳梗塞発症率
0~3点 1.0%
4~5点 4.1%
6~7点 8.1%
※3点以上では入院治療が推奨される
※4点以上では、急性期(21日間)にDAPT(抗血小板薬2剤併用療法:アスピリン+クロピドグレル)3週間以上で出血リスクが高くなってしまうため3週間に留めること
※低リスクでも「MRI DWIで病変陽性例」「心房細動合併症例」「頸動脈・頭蓋内動脈の50%以上狭窄病変合併症例」は注意を要する。
「ABCD3」「ABCD3-I」、スコア
ABCD2スコアに
D:dual TIA(過去7日以内の2回以上の発作)を加えた「ABCD3スコア」、
さらに
I:imaging(50%以上の頚動脈狭窄、および急性期MRI-DWIでの陽性所見を加えた「ABCD3-Iスコア」
なども提唱されている
治療方針
※ 基本的には専門医に入院の相談をする必要あり
発症から48時間以内、特に24時間以内は脳梗塞に移行する可能性がある
治療薬
非心原生
急性期(発症48時間以内):
① DAPT:
アスピリン160~300㎎/日(通常200㎎)
+
プレタールOD(100) 1回1錠 1日2回
または
プラビックス(75) 1回4錠1日1回、2日以降は1回1錠 1日2回
② アルガトロバンor オザグレルナトリウム点滴静注
・原則的には降圧はしないが、SBP>220mmHgまたはDBP>120mmHgが持続する場合に限り、155程度の降圧を試みる
48時間後~21日間:
DAPTは、3週間以上で出血リスクが高くなってしまうため、3週間に留めること
・DAPT
アスピリン100㎎
+
プレタールOD(100) 1回1錠 1日2回
または
プラビックス(75)1回1錠 1日2回
21日以降(慢性期):
・アスピリン100㎎単剤
心原生(NVAF:nonvalvular atrial fibrillation)
・DOAC(Ccr≧30mL/分)またはワーファリン
・Af合併例ではDOAC
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